とある男と女の物語
それはまるで
60年代の洋画の世界のような雰囲気
モノクロで映し出された街には
歩道の上をケーブルカーが走っており
沢山の人で溢れかえっていた
そこに
とある男ととある女がいた
2人は夫婦で
決して豊かとは言えない生活を送っていた
男は自由な性格
靴を履いていても
水たまりの中を歩く
道を行くのに
乾いた道や水たまりのある道の区別をせず
行きたい方向へ進む
ただそれだけなのだが
妻である女も含めて
人は男を怪訝に思っていた
そんな2人は
毎年の記念日に写真を撮る事が決まりだった
その写真を撮ってくれる人は
彼らの知り合いのある人
ある人はいつも言う
はい 笑って
2人は貧しかった
男は気にもしなかったが
女は辛く
なかなか笑えなかった
辛い時こそ笑っていなさい
はい 笑って
それが
写真を撮る時のお決まりのやり取りだった
その頃の2人が良く食べた物と言えば
ミルクでといたマッシュポテト
塩味を効かせているが
具材は何もない
ある人は
そのポテトを大切に想いなさいとも言う
そして
笑っていなさいと
女は辛かった
男は相変わらず
靴を履いたまま水の中を歩くし
マッシュポテトも飽きるほど食べた
けれど
努めて笑っているように心がけた
それから数十年が経った記念日
2人は今年も写真を撮ってもらっていた
はい 笑って
2人は笑った
とても良いねとあの人は言った
ところで
ポテト料理は好きかい?
とあの人は尋ねた
女は好きだと答えた
色々な具材を加えて
ポテトサラダにしたり
ラザニアにも入れたりすると
とても良いねとあの人は言った
マッシュポテトはどうだい?
とあの人は尋ねた
女は言葉が詰まったけれど
やがて
好きだと答えた
辛かった頃を思い出すけれど
それを食す度に
笑っていようと思えたからと
あの人言った
辛い時の経験は
何かをキーワードにして必ず蘇る
君にはマッシュポテトがそれだ
マッシュポテトを思い出す時に
辛い想い出だけが蘇らないように
私は笑っていなさいと伝えていたんだよ
一緒に素晴らしい想い出も蘇れば
これまでの人生が
とても美しく素晴らしい道のりであったと
心から思えるようになるから
今笑って過ごせる事は
未来へのギフトなんだ
確かに辛さを越えて生き抜いてきた自分への
愛と感謝のギフトになるんだよ
女は思った
具材のないただのマッシュポテトばかりだった日々
今も尚 男は変わらず
靴を履いたまま水の中を歩くけれど
具材を入れ
料理のレパートリーも増え
楽しく食事をいただけている
そう それは
男が女の幸せを願い
ひたすら毎日努力を重ねて来たからだ
かと言って仕事に毒される事はなく
靴を履いたまま水の中を進みたいように進み
自分を見失わないように
女を愛する自分でいられるように
変な目で見られながらも
働き抜いたからだ
男は女を愛していた
今尚
靴を履いたまま水の中を歩くけれど
それでもまだ
女を愛している
幸せを願っている
マッシュポテトは
そんな2人を支えてくれたエネルギー
素晴らしい想い出として
蘇る未来を自分たちで作った
そんな「今」に
君たちは生きている
とても良いとあの人は言った
2人はまた 笑った
…という夢を見ました
まるで洋画のような街並みで
物語がしっかりした夢
鮮明に覚えていたのだ記してみました
貧しさが良し
豊かさが良し
汗水流して働き詰めるが良し
という事ではなく
無理矢理笑って
自分を押し殺すのでもありません
その辺の曖昧な部分は
夢を見ている私には
言葉を越えて伝わっていたため
夢の中で「シーン」としての描写はなく
エネルギーとして存在していました
辛いものは辛いから
ならばどうして笑っていようか
というのは考えなくてはいけません
試行錯誤しながら毎日を生きる事の積み重ねで
突破口が開けるようにも思います
自分のために
自分を喜ばせる努力は惜しまないよう
出来るだけ笑って過ごしていたいですね